「ないって……あんた……」
「毎日一緒だったから、その必要性はなかった」
「担当代えになったら、連絡ぐらいとれよ!」
「毎日一緒だったから、その必要性はなかった」
「担当代えになったら、連絡ぐらいとれよ!」
歌恋はそう云うけれど、仕事ではなく個人で連絡しても、あの調子で接してくるのかどうか。
静自身、歌恋と今の今までこの会話をするまで、自覚していなかったけれど。
自分に自信がないから、彼にどう連絡とっていいかわからなくて、それでずるずると、時間がすぎた。
8歳差の年齢差は大きい。
静自身、歌恋と今の今までこの会話をするまで、自覚していなかったけれど。
自分に自信がないから、彼にどう連絡とっていいかわからなくて、それでずるずると、時間がすぎた。
8歳差の年齢差は大きい。
「普通さ、三年つきあってれば、それなりにお互いラブラブの時期もあったでしょ?」
「……多分?」
「多分? って、何故疑問系? 何故持続しないのあんた!」
「いろいろ考えて」
「考えるな! 感じろ!」
「ブルース・リー?」
「そんなところだけツッコミかよ!」
「……多分?」
「多分? って、何故疑問系? 何故持続しないのあんた!」
「いろいろ考えて」
「考えるな! 感じろ!」
「ブルース・リー?」
「そんなところだけツッコミかよ!」
ガッと歌恋はヘアメイクしてもらった鮮やかな巻き髪の頭を、ネイルを施した爪で抱え込む。
「わかってた、わかっていたよ、あんたがそーゆーキャラだったってゆーのは! アイツの前に付き合っていた男ともそーだったよ! うがあああ! 思い出した! 持続しないんじゃない。そもそもないんだ! あんたのキャラからいって!!」
一人で興奮している歌恋を見て静は溜息をつく。
「アイツのペースなら、静のこの性格をひっぱってくれるものと思っていたのに! 受身すぎるだろ! お前!」
ビシイっと人差し指で指差されて、静はその歌恋の指をぐっと握り締める。
「何歳よ、もう!!」
「来月31」
「さんじゅういち! さんじゅういちにもなって、何故そんななの!!」
その数字を連呼して欲しくないなと思う。
「何故って……仕事忙しいし」
「担当代えしてから、あいつとは逢わなくなってどれくらいなの?」
「来月31」
「さんじゅういち! さんじゅういちにもなって、何故そんななの!!」
その数字を連呼して欲しくないなと思う。
「何故って……仕事忙しいし」
「担当代えしてから、あいつとは逢わなくなってどれくらいなの?」
まさか、この静の性格に見切りをつけて、あの彼が、静を切り離しにかかってるとは歌恋としては思いたくない。
静は、最近逢ったのはいつだっただろうと、思い返す。
今現在は、新人のプロモーションだから、とにかくあちこち回るし、地方にも行ってる。
「二ヶ月はないね。最初の数週間は新しいマネージャーに引継ぎもあったけれど。その後は地方に出張してたし。向こうも海外レコーディング」
「今連絡しろ、今、ココで連絡しろ!」
静の肩を掴んでガクガクとゆする。
「時差がある」
「構うな!」
静は、最近逢ったのはいつだっただろうと、思い返す。
今現在は、新人のプロモーションだから、とにかくあちこち回るし、地方にも行ってる。
「二ヶ月はないね。最初の数週間は新しいマネージャーに引継ぎもあったけれど。その後は地方に出張してたし。向こうも海外レコーディング」
「今連絡しろ、今、ココで連絡しろ!」
静の肩を掴んでガクガクとゆする。
「時差がある」
「構うな!」
歌恋が叫んだ瞬間、静のスーツのポケットに入っていた携帯がブブブっと振動し始める。
歌恋の興奮を収めるように、静は片手でそれを取り出して、片手で歌恋を諌めた。だから誰からの電話かなのかを、液晶画面で確認することなく受信ボタンをオンにしたのだが……。
歌恋の興奮を収めるように、静は片手でそれを取り出して、片手で歌恋を諌めた。だから誰からの電話かなのかを、液晶画面で確認することなく受信ボタンをオンにしたのだが……。
『静?』
聞こえてきたのは、ランキングチャートの上位に入り込むあの声。
今の今まで、歌恋と二人で話していた会話での中心人物。
なんというタイミング。
名前を呟きそうになって、静は周囲を見回す。
誰もいないと思われるスペースに移動してようやく話しかける。
今の今まで、歌恋と二人で話していた会話での中心人物。
なんというタイミング。
名前を呟きそうになって、静は周囲を見回す。
誰もいないと思われるスペースに移動してようやく話しかける。
「奏司?」
『うん。今忙しい?』
「MWの収録中」
『ああ、そう、どのくらいかかりそう?』
現在夜の7時14分。未収録のアーティストはあと3分の1はいる。
「まだ少し……日本なの?」
『うん、さっき帰ってきた。関空行きに乗って国内線に乗り換えた、羽田使うことのあるからこのマンション、便利だ』
「そう」
『今日は無理?』
「遅くなる」
『いいよ、待ってるから』
「明日はオフ?」
『うん』
「そう……それじゃ」
『うん。今忙しい?』
「MWの収録中」
『ああ、そう、どのくらいかかりそう?』
現在夜の7時14分。未収録のアーティストはあと3分の1はいる。
「まだ少し……日本なの?」
『うん、さっき帰ってきた。関空行きに乗って国内線に乗り換えた、羽田使うことのあるからこのマンション、便利だ』
「そう」
『今日は無理?』
「遅くなる」
『いいよ、待ってるから』
「明日はオフ?」
『うん』
「そう……それじゃ」
自分の予定よりも、彼の予定を確認して動こうという気持ちはある。
が、その行動が三ヶ月前まで彼のマネージャーだった仕事上の習慣からきているものなのか、それとも、自分の性格からきているのか、静自身はわからない。
彼からの連絡が、とりあえず、まだあるならば。
彼の時間が最優先。
が、その行動が三ヶ月前まで彼のマネージャーだった仕事上の習慣からきているものなのか、それとも、自分の性格からきているのか、静自身はわからない。
彼からの連絡が、とりあえず、まだあるならば。
彼の時間が最優先。
――――そうするのは、多分。静自身が彼を想っているからなんだろう……。歌恋に鈍いとかリアクションが無く受身すぎるとか言われても、静は否定しない。
そんな静でも、興味がなければ相手にそれは伝える。
それをしないのは相手に気持ちがあるからだ。
ずっと一緒にいたから、気がつかなかったけれど。向こうはどういうスタンスだろう。
連絡がなかったのは、静との関係をプライベートごと「切る」為だったのだろうと静自身は思っていたのだが……。
違うのだろうか?
そんな静でも、興味がなければ相手にそれは伝える。
それをしないのは相手に気持ちがあるからだ。
ずっと一緒にいたから、気がつかなかったけれど。向こうはどういうスタンスだろう。
連絡がなかったのは、静との関係をプライベートごと「切る」為だったのだろうと静自身は思っていたのだが……。
違うのだろうか?
――――逢うのが、少し怖い……。
この呼び出しが、あの彼から本当に「いらない」と言われるのかもしれないと、それがないとは限らないから……。
昔はどうだったろう。
今までのそう数もない恋愛経験を思い返してみる。
いつも相手から切られる状態ではあった。
受身でリアクション薄くて、可愛く拗ねたり甘えたりなんてことなくて、相手の男にはそれが物足りなくて、関係の終わりを告げられていた。
……彼も、そうなのだろうか?
昔はどうだったろう。
今までのそう数もない恋愛経験を思い返してみる。
いつも相手から切られる状態ではあった。
受身でリアクション薄くて、可愛く拗ねたり甘えたりなんてことなくて、相手の男にはそれが物足りなくて、関係の終わりを告げられていた。
……彼も、そうなのだろうか?
――――可能性はなくもない。
静は溜息をつく。
元々年齢差に無理がある。
立場的にも無理がある。
もっと早くに別れがきてもそれが当たり前だったのだ。
元々年齢差に無理がある。
立場的にも無理がある。
もっと早くに別れがきてもそれが当たり前だったのだ。
――――今までが奇跡みたいなものだったのだから。
TV収録が終ると、担当する新人グループは、飲み会をするので送らなくてもいいと言われた。
飲みすぎないようにと注意して、明日のスケジュールを確認すると、静は車を一旦社に戻して、電車を乗り継ぎ、奏司のマンションへたどり着く。
バッグから鍵を取り出す。冷
オートロックの鍵を開けて、エレベーターで高層階にある、奏司の部屋の前のドアチャイムを鳴らすと、レバーノブが動いて、ドアが開く。
部屋の主と静の視線が合った。
彼は静を見つめたまま、左手を伸ばし、静をドアの中にひきいれる。
――――気持ちが醒めているなら、彼を見ただけで、こんなに泣き出しそうにはならない。
ドアをロックしたかと思うと、彼は身体で静を押しつぶすようにドアに押さえつけた。
「……」
普通に彼に会うだけで、精神的に居心地が悪くて息苦しさを伴うのに、物理的に距離を縮められ戸惑う。
静の唇に、彼の唇が当たる。
呼吸することも許さないようなキス。
咥内に入り込んで、静の舌先も歯列もなぞって、唇が離れたかと思うと、角度を変えて、同じように侵入を繰り返す。
こんなキスは、あまりされなかった。
いつも、優しくて、静の気持ちを窺うようなカンジで、気持ちや感情は二の次。
そんなキスだったのに、今日は違う。
「……んっ……」
酸素を求めるようとしただけなのに、艶めいた声が漏れる。
ようやく唇が離れたかと思って、息をつくと、彼の手が静の頬から首筋、ブラウスの衿元まで降りてくる。
静が酸素を求めたように、彼が静の身体を求めているのはわかる。
ブラウスのボタンにかかる指が起用な動きで外しにかかる。
「……」
普通に彼に会うだけで、精神的に居心地が悪くて息苦しさを伴うのに、物理的に距離を縮められ戸惑う。
静の唇に、彼の唇が当たる。
呼吸することも許さないようなキス。
咥内に入り込んで、静の舌先も歯列もなぞって、唇が離れたかと思うと、角度を変えて、同じように侵入を繰り返す。
こんなキスは、あまりされなかった。
いつも、優しくて、静の気持ちを窺うようなカンジで、気持ちや感情は二の次。
そんなキスだったのに、今日は違う。
「……んっ……」
酸素を求めるようとしただけなのに、艶めいた声が漏れる。
ようやく唇が離れたかと思って、息をつくと、彼の手が静の頬から首筋、ブラウスの衿元まで降りてくる。
静が酸素を求めたように、彼が静の身体を求めているのはわかる。
ブラウスのボタンにかかる指が起用な動きで外しにかかる。
「奏司……」
彼がまだ、少しは自分を欲しいと思ってくれているなら、彼の好きなようにさせようと、静は力なくドアに背もたれた。