家電量販店の女性販売員は語る




「ちょっと聞いてよ、サービス入るんでしょ? 
あたしもよ、いやーさっきね、すごいもん見ちゃった。すごいもんって何って? リアルホモ! ホモよホモ! え? ゲイとホモの差って何? やっだ、わかんないわよ。わかんないけどー男同士のカップルだったのよ。
え、だって同棲してるみたいだったよ。
あたしキッチン系じゃん? 炊飯器を買う買わないでいちゃいちゃしてたんだってばー。
どんな状況だったのかって?
最初さー、すごく華奢な少年系の子が炊飯器を真剣に見てるのね、多分20歳ぐらいじゃない? 
学生っぽいカンジで、そのぐらいの子が炊飯器見てるなんて、一人暮しでも始めるのかなって思うじゃん。で、声をかけたのよ『そちらはファミリー用の容量で、少々お値段も張ります、単身者の方でしたら、こちらのコーナーにもございます』ってさ。
そしたら、『いいえ、同居人がいるので』って云うのよ、まあ値段の高いもん買ってくれそうなら、そっちを薦めてもいいのかなって思って張りきって商品紹介をしようとしたら、きたのよツレが。そのオトコノコのツレが! 
それが、すっごいイケメンなのよ!
あたし好きなタイプだったの高身長でさ、単に好みの問題かもだけど、タレ眼に吊り眉って弱いの。
ま、そのかっこいい男の方が、近づいてきてさー『なんだ、まだ悩んでるのか』って声をかけてきて、
『機能で選んでいいんじゃないか?』
っていうんだけどオトコノコの方は
『お前が使えるモノを選びたい』
とかいうのよ、タメ口でさでもイケメンは対して気にしている様子でもなくて
『いいよ、降矢が買いたいならそれで』
っていうわけそしたら、男の子のほうが呆れ顔
『キッチン系の家電、オレ好みで選んだらお互い別れる時どうすんの』
そうよ、別れる時っていうのよ、それって同棲てか同居してるってことじゃん。
で、イケメンがそんなこと云われて『別れる』の一言ですっごい切なそうな表情しててさー。
そーよ。え? 何? でしょ? でも、オトコノコの方はイケメンのそんな表情に全然気が付いてなくてさ、あたしに云うのよ
『空炊きしても大丈夫な商品ありますか?』
って。はあ? って思っちゃた。
そしたら、イケメンが云うのよ
『もう空炊きはしないから、安心して選べ』
って。それってイケメンが炊飯器壊したんじゃないのかって? あたしもそー思う。で、オトコノコの機嫌をとるべく炊飯器を買いに来たんじゃないの?
支払いイケメン持ちだったもん、でもきっと使うのはあのオトコノコじゃない? 
『もう、別れる時も、それ持っていっていいから』
とか云うと、オトコノコがぱあって顔を明るくして、別にオトコノコは美形ってわけじゃなくて線が細いってカンジの子なんだけど、その表情はね、まあ可愛いかったわ。
で、ウキウキしながら遠赤外線がどーのとか、やっぱり使い勝手がイイヤツとか、節電できるタイプもいいとか、選びはじめたのね。その様子をイケメンがまたもう可愛いなーと思って見てるみたいだった。恋人とか彼女見る目みたいなのよ! で、
『ねーねー、倉橋、せめてボディの色はどれ? ほら、最近シルバー系が多いじゃん、見た目で選ぶならどれ?』
ってオトコノコがイケメンに問い合わせてんの。
パンフレット持って一生懸命解説してるオトコノコと肩を並べてて、そのツーショット、何?ってカンジだったわ――――
別に肩組んだり手を繋いだりもしてないんだけど、いちゃいちゃしてるのよ。
パンフの写真に、炊き込み御飯の写真があってさ
『栗ご飯炊きたくなる』
とかオトコノコがいってるのよ。だから多分オトコノコが料理するんじゃないの? 
うん、買っていったわよ、売れ筋のヤツ。
イケメンがそれを持ってあげてるところが、また甲斐甲斐しいの! 
そうよそう。イケメンの片想いっぽいのよねー、うん。切ないわ、オトコノコはノンケでしょ。
でもさー世の中いい男だと思えばホモだもんね、やだやだ。ウチラがあぶれる原因をかいま見たってカンジ。
え? 合コンあるの? いつよ云ってよ。ほんと、あたしもイケメンな彼氏をみつけてあんな風に思われたいっていうの」